
どこまでも広がる、この空想上の世界を一緒に走っていこう
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Eveの「心海」という曲を聴きながら白昼夢のように浮かんだ情景を描いてみた。むっちゃいい曲。
☆アートストリートというイラスト投稿サイトにも絵を投稿しています↓
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Eveの「心海」という曲を聴きながら白昼夢のように浮かんだ情景を描いてみた。むっちゃいい曲。
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ある昼下がり、テーブルを拭こうとして、流しの布巾を洗って絞ったら、黒い何かが親指に飛びついた。
「いたい!ムカデに刺された!」
私は叫んだ。
この騒ぎに子どもたちが集まってきた。
夫が言った。
「早く水で傷口を流して!」
私は急いで傷口を水道水で流した。
ジクジク傷んだ。
蚊以外の虫に刺されたことなんてほとんどないなら、こんなに痛いことにビックリした。
すぐに親指が赤くパンパンに腫れた。
徐々にその症状は広がり、手の甲はんぶんまで広がった。
いつも血管や骨がうっすら浮き出ているほっそりとした手が、クリームパンの膨らみみたいにパンパンになった。赤っぽいからトマトパンかな。
私はじわじわと地味な怒りが湧いてきた。
なんで、私がこんな目にあわないていけないんだ!私はただ布巾でテーブルを拭こうとしただけなのに!憎たらしいムカデめ!
こんなことを心の中で毒づきながら、私が痛さを思いっきりジクジクと感じている間に、夫が流しで見つけたムカデを殺していた。
ムカデはハサミで真っ二つになってしばらく動き回って死んだ。
まあまあな大きさだった。10センチぐらいかな。
そして残酷な殺し方だなぁ、と思った。
「仇を取ったぞ」
夫は言った。
私は手の一部の腫れ、ムカデは真っ二つの死。
なんだか不釣り合いだなぁって思った。
今はもう命がないムカデの毒が、今私の手の中でドクドクと激しく脈打っている。
刺された場所は夜も痛かったし、次の日起きても腫れて真っ赤だった。確かにこれは毒だ、と思った。私は毒の苦痛なんてフィクションの世界でしか馴染みがなかったけれど、初めて毒を体でなまなましく感じた。でもなんてかわいい毒なのだろう、とも思った。調べたらムカデに噛まれても3日ぐらいで治るらしいし、アナフィラキシーショックも起こる可能性はゼロではないが、かなり稀らしい。正直、大したことのない毒だ。
このムカデ事件はこんな感じで口の中のラムネみたいに、スーっと日常に溶けて消えていくように思えた。
だけど、次の日の夜事件が起きた。
夜、子供達を寝かしつけたあと、隣の部屋で夫と二人でテレビをみていた時、7歳の息子のぐずる声が聞こえた。
「大丈夫よーすぐにお母さんいくよー」
最近夜にぐずることなんてほとんどなかったのに珍しいなぁ、と思いながら、携帯のライトを付けて、隣の部屋に行き暗闇の中の寝ている息子の場所を照らした。
すると、息子の顔に特大のムカデが這っていた。私は一瞬時が止まった。え?これ現実?それで息子は寝ボケながらぐずっていた。
「大変またムカデ!来て!」私は叫んでいた。
「えー?!またムカデ!」
夫は飛んできた。
私は息子の手を引っ張ってムカデから遠ざけた。
息子はギャン泣きになっていた。
「痛い!痛い!」
どうやら唇を噛まれたらしい。
水道であらってやった。
ずっと息子は泣いていた。
「死ぬー死ぬー病院行くー」
水道で傷口を流している間、夫はまたハサミでムカデを真っ二つにした。片方はどうやら逃げたらしいが、どうにかみつけてとどめを刺した。半分になっても動けるなんて凄い生命力。
他の兄弟も「どしたどした」と起きてやってきて、夜の12時に我が家はちょっとした騒動になった。
息子はしばらくギャン泣きだった。そりゃあ、あんな大きなムカデが顔を這っていたなんて、人生のトラウマものだ。
息子の唇は腫れた。だけど、おそらく本格的に噛まれたのではないのだろう。その日の夜は息子はしばらくは怖くて痛くて寝れないといっていたが、結局寝た。そして次の日、息子の口はあまり腫れず、次の日には、だいぶ痛みも引いて普通に学校に行った。私の手はまだ痛かった。
この一連のムカデ騒動の間、私はネットでムカデについて色々調べた。
適当なサイトで調べたので真偽は定かではないが、ムカデは基本単独行動であるが、番で行動することがあるらしい。
特に母親と子どもの組み合わせが多いとか。
あと、ムカデはあの見た目と噛み付くことから害虫ではあるが、その2点を除くと、ゴキブリや蜘蛛を食べるので益虫といえなくもないらしい。
ムカデは人間を積極的に攻撃することはない。家に入ってくるのは、餌を追いかけて入ってしまうから。
そして、ムカデのお母さんは子育て熱心でしばらくほとんど餌を食べずに子育てに奮闘するらしい。卵を一生懸命守って、生まれたら外敵から子供を守り餌を与える。
なんだか、こんな話を聞くと子育て中の私は親近感が湧いてきて、ついホロリとなってしまう。
あと、恐ろしいことにムカデの体液は他のムカデを呼ぶらしい。だから潰したりしてはよくない、と。だからハサミで切るなんて絶対ダメなのだろう。
私はこんなことを調べながらこんな物語をぼんやり考えた。
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やっと親離れした子どものムカデちゃんは、独り立ちしたあと、ある湿った気持ちいい寝床をみつけた(人間からしたら汚い布巾なんだけど)。
そこで気持ちよく寝ていると、いきなり強い力で押しつぶされそうになったので、寝どこから飛び出て必死に噛みついた。
噛みついたあと、必死に逃げようとしたのだけど、次の瞬間体が真っ二つになった。
ああ、大変だ。僕は死んじゃう。ここまでお母さんに育ててもらったのに。お母さんバイバイ。子ムカデちゃんの命はここで終わった。
少し離れた場所で、お母さんは子どもの匂いを強烈に感じた。そして、嫌な予感がしてその匂いをたどって行った。ああ、どうか無事でいて
、私の大事な子ども。でも探しても探しても子どもはいない。途中山みたいなのに登った。なんだかその山はモゾモゾ動いている。あ、これは生き物だと思った。次の瞬間強烈な光が上から降ってきて、「ムカデ!」と大きな声が聞こえた。なんだか、やばいと思って必死に走った。子どものためにも、こんなところで死ぬわけにはいかない。すると次の瞬間体が真っ二つになった。真っ二つになったまま、必死に走った。子どもの命が気になる。子どもは大丈夫だろうか。そんなことを考えながら必死に走った。バン!
この音と一緒に母ムカデの命は終わった。
こうして2匹のただ一生懸命生きていただけのムカデの命はこの世界から消えた。
*******
こんな物語を考えながら、私はハハっと心の中で空虚に笑った。
人間ってこうやって、自分で勝手にストーリーをでっち上げて、勝手に感傷的になれるように、取るに足りないような出来事にだって意味を与えれるんだなって。
死んだ2匹のムカデなんて、とうてい人間なんかに理解できない世界で生きているだろうに、私は人間の世界で無理矢理解釈したストーリーの形にしてみて、今回のムカデ事件の一連の流れで生じた犠牲や痛みに意味を与えたがっている。
ああ、でも、なんだか、噛まれた時に湧き出た「くそー憎たらしいムカデめ!」という禍々しい感情は気づいたら無くなってしまったようだ。人は自分で作った都合のいいストーリーで、自分の感情をコントロールできるんだ。
私はムカデに噛まれてから3日目に今この文章を書いている。
噛まれた左手はだいぶ腫れはなくなり、痛みはほぼなくなったが、地味な痒さとほんのりとした熱を帯びている。今はもうこの世界にいないムカデの命の残火。
きっと、あと1週間もしたら嘘のように左手は何事もなかったように元通りになるだろう。
あの2匹のムカデのことも、一連の出来事も記憶の彼方に離散して、もう元の形を思い出せなくなるだろう。
でも、なんとなく、そうしたくなかったから、きっと私は今文章に残している。
今回の出来事を、なんとなく、無駄にしたくなかった。
きっとそれは、私に出会うことによって死んでしまったムカデへのなけなしの罪悪感、そしてその感情が誘発した、なけなしの罪滅ぼし…の成した事なのかもしれない。
ほんとうに、なけなしだけど…
今回のことを何も残さなかったら、きっとあのムカデたちのことを思い出すことができなくなってしまうから。
文章に残しておけば、この文章を読み返す時だけでも、彼らのことと、その時私に生じた感情の流れに思いを馳せれる。
きっと私はちょっとした罪悪感から、彼らをちょっと愛してしまったのだろう。
ちょっとは、私たち家族しかしらない彼らの死を意味あることにできるかな、なんて思った。
なけなしの、自己満足で、自分勝手な、あまりにも密かな罪滅ぼし。
いや…こんなのは偽善で、ただ、自分の感じた痛みと恐怖と憎悪を無意味なものや悪いものにしたくないだけかもしれない。
ま、それでも、私はムカデを嫌いになるという一方方向でなく、少しでも愛する努力をしたのはきっと間違いない。
うーん、それでも、やっぱりムカデは好きじゃないんだよな。
でも、嫌いでも、ないんだよ。…いや、やっぱり嫌いか。
どちらにしても、もう私の生活している世界には現れないで欲しい。
お互いに不幸になるだけだから。
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R7.6.1
ペットのハイマル君が死んだ。
その日の昼にブロッコリーをあげようとして、だけど夜にあげよう、って思ってたのに。
長女が寝る前に餌をあげようとした時、「あれ?ハムちゃん生きてる?」って言った。
私は見た。
「あ、多分死んでるわ」
見てすぐにわかった。
いつも寝ている、ゲージの隅の定位置に丸まったお尻が見えるのだけれど、いつもの緩やかな呼吸の波のような動きが、明らかになかったから。
寝ようとしていた、4年生の次女と1年生の息子が起きてきた。
みんなで、死んだハイマルをみた。
長女は昨日の夜、手に乗せたらしい。
その時は元気だったみたい。
だけど、今は中身がどこかへ行ってしまった。空っぽのハイマル。
頭が混乱する。あの愛らしいフワフワのハイマルは一体今、どこにいるのだろう?
みんなで泣いた。
一年生の息子が泣いていたのは、正直おどろいた。
手に乗せた時、甘噛みをいっぱいするハイマル。
ブロッコリーを美味しそうに目を細めながら食べるハイマル。
変な水の飲み方をするハイマル。
一回脱走して、台所でトコトコ歩いていたハイマル。
お尻の穴丸見えの変な格好で眠っていたハイマル。
全然動きが素早くないハイマル。
どこかおっさんっぽいハイマル。
頭の中がハイマルでいっぱいになった。
きっと子ども達の頭の中もハイマルでいっぱい。
ハイマル、ハイマル、ハイマル、
でも、ハイマル2年も生きてくれた。
ゆきちゃんは3ヶ月ぐらいで死んじゃったけど。2年も生きてくれただけで嬉しいはずなのに。
やっぱり、ハイマルが死ぬのはとても悲しい。これって欲張り?
暗闇のベッドの中で、次女と息子が「ハイマルのことで頭がいっぱい、今日寝れないかも」と言った。
私は二人をギュッとした。
「大丈夫。今頃ハイマルは星空のアスレチックで遊んでるよ。大好きなブロッコリーを沢山たべて。ひまわりの種もきっといっぱいあるよ。」
これが子ども達に対する嘘かどうかなんてどうでもいい。どうだっていいんだよ。そんなの。
二人はちょっと笑った。
そして、すぐに寝た。
すぐに寝るんだ、って思ったけど、子どもはそんな感じがいいよなって思った。
次の日の朝、ハイマルのお墓を学校に行く前に子どもたちと作った。
「ハイマル、バイバイ」
といって穴のそこのハイマルに土をかけた。ハイマルの姿が一気に見えなくなった。埋めた後、そこに長女が丁寧に山を作って、そのてっぺんに花を添え、ヤツデの葉をちぎって山の周りを囲った。手と靴が泥だらけになっていた。
家に戻りながら、息子がポツリと言った「ハイマル、今までありがとう」
私は、そんな言葉が自然とでる息子に驚いた。
成長したなぁ、と思った。
「ハイマル、今までありがとう」
私も口に出していってみた。
目の前にハイマルがいるような気がした。
ハイマルが今、どこかで楽しそうに暮らしてる…
こんな考え、真実はそんなわけない、って心のどこかではわかってる。
私も、きっと子どもも。
だけど、そう思うと、心が楽になる。真実かどうかなんて、そんなに重要かなぁ。そもそも真実って何?
弱い私は、ハイマルがこの世界にはもういないって思っちゃったら、心が押しつぶされそうになるから。
心がいたくなるから。
だから、創作する。ハイマルが死んでぽっかり穴が空いた分を、創作で埋める。そう、これは自分の為の行為なんだ。決してハイマルの為だなんておこがましいことはいえない。まだこの世界に生きている私のためなんだ。ハイマルを愛した私の為の行為なんだ。
楽しくどこかで生き生きと遊んだり、もぐもぐと美味しそうに食べているハイマルを創造する。次は私の心の中でハイマルを飼いはじめる。
弱くちっぽけな自分を慰めるために、そして、ハイマルの肉体がない、この世界に、少しでもハイマルの存在の痕をつけるために、私は創作しようと思う。だから、今も文章を書いている。
ハイマル、私は君を忘れたくない。
だから、忘れないように、努力するよ。
かわいい、かわいいハイマルを愛してるから。
私の創った世界では、ハイマルは幸せに暮らしている。ずっと、永遠に。
そういう行為は誰にもとめられない。
世界を創るって…
こういうことな気がするよ。
冷蔵庫の中にはまだ、ハイマルにあげようと思っていた小さいブロッコリーが、さみしく横たわっている。
あ、泥だらけになった長女の靴を洗わないとな。
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