もう、二度と来ることのない季節。
命が一年の、ある植物の一生を例えとして。
その植物が種の時の春。それはもう来ない。
その植物が若葉の時の夏。それはもう来ない。
その植物が花を咲かせ美しく妖艶な匂いを撒き散らしている秋。それはもう来ない。
その植物がカラカラと茶色く枯れて種が出来る冬。それはもう来ない。
その植物が種だった、蕾だった、花だった、確かにその植物の中に、生き生きとした水々しい生命力が脈打っていた、確かに生きていた、その一瞬一瞬の季節はもうその植物にはやってこない。
だけど、その植物の命が終わっても、同じ春夏秋冬はやってくる。
グルグル何度も何度も。
季節は何度も何度も確かにやってくるけれど・・・
私が今の私である時にやってくる今の季節は、儚く一瞬の二度とやって来ない季節だ。
ふと、大人になった私はグルリと自分の歩いてきた道のりを振り返ってみた。
確かに、全ての過去のあの瞬間のあの季節は、もう二度とやってこない。
そして今もそんな二度とやってこない季節の中を私は歩いている。
「私は今確かに生きているんだなぁ」としっかり自覚して、今をしっかり噛み締めたい・・・と時々思う。
・・・だれど、やっぱりそこを歩いている今は、ただ、その中を歩いているってぼんやりと思うだけ。
そして、それは仕方がない事だとも思う。
別に、二度とやって来ない今の季節に、未練がましく後ろ髪を引かれたり、名残惜しく寂しい目で見つめ続ける必要もないし、寧ろそんな事、しない方がいい。
今をとにかくしっかり生きる。後悔しないように生きる。最大限に生きる。
先のことをクヨクヨ不安がらずに、今できるベストをやり続ける。
それだけで、充分だと思うんだよね。
「今を精一杯生きる」そんなシンプルなことを、ずっとやり続けていきたいよ。そこら辺に咲いてる草花みたいにさ。
それは、常に全速力で走り続けなくちゃいけないって訳じゃない。ゆっくり歩くってことも、精一杯生きる、ってことの一つの形だと思ってる。